歯科における薬剤性味覚障害

普段、内服している薬や歯磨剤などでも、味覚障害を引き起こす可能性があります。
薬剤性味覚障害について紹介します(下記、論文 一部改変)。

<緒言>
薬物によって惹起される口腔内の異常感覚としては,味覚障害や口腔乾燥などがあげられ,味覚障害は患者さんの生活に深く影響します。今後,超高齢社会のため複数の基礎疾患をもつ,薬剤性味覚障害患者がより増加すると考えられる。そのため,歯科における薬剤性味覚障害の実態を明らかにするため,過去の報告と比較検討を行い,概説も含めて考察を行った。
<結果>
味覚障害(n=373)の原因のうち薬剤性が占める割合は,当科では歯磨剤によるものも含めて 9 例,2.4%(9/373)であった(平均血清亜鉛値 69.6μg/dl,平均病悩期間 16 か月,図)。症状は味覚減退 3 例,味覚消失 3 例,味覚過敏,解離性味覚障害,自発性異常味覚がそれぞれ 1 例ずつであった(下記の表)。原因薬剤は向精神薬 3 例,歯周病治療薬,歯磨剤が各々1 例であり,抗アレルギー薬,血圧降下剤または尿酸再吸収阻害剤,抗がん剤,吸入ステロイド薬が各々 1 例であった。歯磨剤を除く,薬剤は味覚異常・味覚障害・味覚倒錯
が医療用医薬品添付文書に記載があるものであった。なお,本稿では医薬部外品である歯磨剤は薬剤ではないが,その薬効成分により引き起こされた味覚障害として薬剤性味覚
障害に含めた。治療は主に薬剤の中止、亜鉛補充療法を行った。

7.結論
 超高齢社会のため複数の基礎疾患を抱える,味覚障害患者が増加すると考えられる。味覚障害は複雑な原因のため診断・治療に難渋することも多いが,歯科医師として,味
覚障害の原因を鑑別し適切な医療提供をすることで患者のQOL および栄養状態を飛躍的に改善できる。

坂田、板垣、庵 ら、歯科における薬剤性味覚障害日口診誌 34巻2号:101~105頁.2021より引用、改変。