味覚障害に対する亜鉛補充療法
~臨床統計および症例報告(亜鉛製剤の使い分け)~

高次医療機関と連携して、系統的に味覚障害の診査・診断を行っている。
亜鉛補充療法は特に、亜鉛欠乏性味覚障害に対して行っており、治療スタンスについて
過去の発表および発表論文から一部改変し紹介します。

<原因別治療の流れ>

<ポラブレジンク(プロマック)の統計、日本口腔科学会雑誌>
【背景】亜鉛製剤の有効性は原因の約70%と報告されている。しかし,当科での亜鉛補充療法の効果は耳鼻咽喉科から報告されてきた程には多くはないことを経験してきた。 そこで今回,味覚障害患者に対する亜鉛補充療法の効果に関して検討を行った。
【対象】
8週間以上にわたり亜鉛製剤(ポラプレジン150 mg,分2)を単独投与した40例。【方法】効果発現までの期間,血清亜鉛値などの各項目別における味覚障害の改善率を比較検討した。血清亜鉛値の評価 は,3段階のcut off値を用いた。
【結果】全体の改善率は50%であった。血清亜鉛値別の改善率は,①60 μg/dL未満で57%,②60~69 μg/dLで56%,③70~79 μg/dL(n=10)で60%,④80 μg/dL以上で14%であった。80 μg/dL未満(57%)と80 μg/dL以上(14%)の改善率を比較すると,両群間に 有意差(P<0.05)を認めた。また,改善までの日数は2か月未満が20%,2か月以上が80%あり,両群間に有意差を認めた(P<0.05)。【結語】血液検査で血清亜鉛値が80 μg/dL未満では約60%のポラブレジンクの効果を認めたが,血清亜鉛値が80 μg/dL以上の場合の有効性は認めなかった。 従って,症例を選択して亜鉛補充療法を長期にわたり行うべきである。

引用文献:
坂田健一郎、山崎 裕、佐藤 淳、榊原典幸、浅香卓哉、北川善政:
味覚障害に対する亜鉛補充療法の検討. 日本口腔科学会雑誌. 69(3):197~203,2020.

<2剤の亜鉛製剤を用いた症例報告、日本口腔内科学雑誌 一部 改変>

当科ではノベルジン(酢酸亜鉛水和物)、ポラブレジンクの個々の特徴を生かしつつ、亜鉛製剤の投与を行っています。ノベルジン投与の場合は、血性銅の推移にも注意を払い、月1回の採血を行っております。

ノベルジン:100mg/day、亜鉛量として100mg
ポラブレジンク:150mg/day、亜鉛量として34mg

引用文献)
渡辺陽久、坂田健一郎、佐藤 淳、羽藤裕之、北川善政他:亜鉛製剤の切り替えを要した低亜鉛血症を伴う味覚障害の1例. 日本口腔内科学雑誌 第26巻 第1号:41-46, 2020, 6月